2017年2月27日月曜日

ゆめみるけんり:マニフェスト的な

どうやって?」と私たちは呟くことになります。通勤電車、満員のなかでどうやって、どうやって詩を擁護していけるというのか?

ゆめみるけんりは、今のところ10人前後、東京と広島に住む同世代のゆるやかなつながりです。大半のメンバーは様々な地域の文学(英米、ロシア、アラビア、ヒンディー…)を大学で専攻した挙句に、社会に放り出されることになりました。私たちにとって文学は、生きることであり、多様な可能性そのものでした。だったのに。いま私たちは雑踏の中で自問し続けることになってしまったのでした。「社会の中でどうやって、文学あるいは詩を、つまりは私たちであるところの私たちを、擁護し続けていくのか?」 実際のところ、どうしたら良いのでしょうか。

私たちは社会に出るとともに、限りなく一人になってしまった——そんなふうに感じます。会社のなかで、通勤電車のなかで、私たちには殻を脱ぎ捨てることができません。周囲には溢れるほど人がいるのに、なぜか私たちはますます一人に還ってゆく。私たちは個として、朝起き、地獄のような電車に乗り、会社に入り、仕事し、会社から出て、帰路につく。そのルーティンには、詩の入り込む隙間がありません。私たちは眠ります——明日寝坊しないで起きられる、ただそれだけのために。

しかし思うのです。この人を人とも思わぬ満員電車の最中で、社会のなかで、それでもなお、私には詩への権利がある。夢みる権利がある。口幅ったいのでひらがなにしましょう、「ゆめみるけんり」と。——こうしてゆめみるけんりは生まれ、人から人へ伝わって、新しいつながりを生み出し、いまここにzineをつくるという共通の目的のために人が集まって一緒に仕事をすることになりました。今後zineづくりとともに、それを核として何か文学・詩のための場を作るためのイベントなども企画していけないか、と考えているところです。

「詩」は、「文学」は、しかし、社会的なるものに反対するものとしてのそれではありません。私たちには生活があり、社会があり、その第三の道、オルタナティヴとして考えてみたらどうでしょうか。私たちにとって、文学は、コミュニカティヴな、開放的な、新しいもの・人との出会いや経験を分かちあう楽しさに溢れた場です。私たちにとって、詩は、生きる経験です、とても脆く危ういが、それは私たちの可能性です。そういうことを愚直に、あいもかわらず、信じ続けていけるために。


文責:工藤順/text: Nao Kudo
2017.2.27 / rev. 2019.3.16

2017年2月25日土曜日

コンテンツ(vol.1)

2017年2月25日に、私たちの初めてのzine「ゆめみるけんり vol.1」を出版しました。まずはKindleで購入できる電子書籍からスタートです。紙版も出版済みですが、在庫僅少状態です。詳細につきましては、メール(droit.de.yumemir@gメール)にてお問い合わせください。5月の「文学フリマ」にも出店しました。
目次は以下の通りです。アメリカ、ポルトガル、ロシア、イタリア・・・様々な国の作家がそろいました。

We have published our first zine, "yumemirukenri 01" on 25 Feb 2017. Now E-book can be purchased on Amazon's Kindle Store. Also, printed version is ready, but the lot is limited. For details, plz contact us via e-mail (droit.de.yumemir@gmail...). Thank you for visiting us at 文学フリマ in May.
Contents on vol.1 is as follows. Original authors are from various parts of world; USA, Portugal, Russia and Italy. We regret that mainly the zine is in Japanese, due to the aim of the zine - translating poetry in various language into Japanese.

「ゆめみるけんり」vol.1

◆◆◆ 特集:冬/雪 ◆◆◆
・Copal Ildeaux「雪のブロードウェイ」(油彩)
・ロバート・フロスト/葛西裕人「カバノキ」
・砂漠で生きる「長い冬/短い旅」(小説)
・アレクサンドル・ブローク/工藤順「『雪のマスク』より、雪の部」
・ダンテ/内藤嵩久「『神曲』地獄篇より」

◆◆◆ 特集2:夢たち ◆◆◆
・八木ひろ子「海辺の世界の物語」(エッセイ)
・フェルナンド・ペソア/ふじたみさと「『船乗り』/エピグラム」(戯曲とエピグラム)

◆◆◆ ステイトメンツ ◆◆◆
・ミケランジェロ/Copal Ildeaux「システィーナの天井画を描いたときのこと」
・ふじたみさと「日記」(断章)
・ニコライ・フョードロフ/工藤順「著作者の権利と著作者の責任、あるいは義務」(エッセイ翻訳と解説)


yumemirukenri 01

     issue: winter/snow
- Copal Ildeaux “Broadway in Snow” (painting)
- Robert Frost / Yuto Kasai “Birches”
- sabaku de ikiru “Long Winter / Short Trip” (novel)
- Aleksandr Blok / Nao Kudo “The Snow Mask: Snow”
- Dante Alighieri / Takahisa Naito “Divina Commedia: Inferno”

     issue 2: the dreams
- Hiroko Yagi “A Story from the World on the Shore” (essay)
- Fernando Pessoa / Misato Fujita “O Marinheiro” and epigrams (static drama, epigrams)

     statements
- Michelangelo Buonarroti / Copal Ildeaux “Quand L'Autore Dipingeva la Volta Della Sistina”
- Misato Fujita “Fragment” (fragment)
- Nikolai Fyodorov / Nao Kudo “Author's right and responsibility, or his duty” (translated essay with commentary)



*「はじめに」より……
(……)「ゆめみるけんり」は、社会に居ながら自分(たち)の生存空間を確保するための試みです。(工藤順)

メンバーズ(vol.1)

目下9人でやっています。2016年の東京国際文芸フェスティバルというイベントのなかで、「多文化の海をおよぐ」というオリジナルイベントを一緒に運営したメンバーを中心にして、いろいろな人たちが参加してとりあえずのコミュニティを形作っています。

ほとんどのメンバーがそれぞれ様々な言語圏(英米、ロシア、アラビア、ヒンディー、イタリア・・・)の文学を専攻していたのですが、それぞれのタイミングで大学を卒業して社会に放り出されることになりました。「ゆめみるけんり」は、すなわち通勤電車のなかで夢をみる権利と言ってもいいかもしれません。「どのようにして社会の中で、詩を擁護しつづけられるか? 詩のための、すなわちわたしのための場所を確保できるか?」という問いかけが私たちの中心的な問題設定です。

本誌から、メンバー自己紹介を転載します。

***

〈葛西裕人 Yuto Kasai〉
白樺にかこまれた道東で、いくつかの夏をすごしたことを思いだしました。

〈工藤順 Nao Kudo〉
ロシア現代文化(詩)。図書館ではたらいています。身体の一部が次第に本になりつつあるのではないか、という疑念、そして恐怖と闘っています。☞https://junkdough.wordpress.com

〈倉畑雄太 Yuta Kurahata〉
大学時代、インドのペルシア語詩について学ぶ。

〈砂漠で生きる sabaku de ikiru〉
1人生活ユニットです。生活をすることで生活を成り立たせています。☞twitter:@mstkaqrg

〈つぐみ Tsugumi〉
広島でOLやってます。苦手なこと。おいしいご飯を作ること。上手にお酒を呑むこと。

〈内藤嵩久 Takahisa Naito〉
1993年新潟県燕市生。

〈藤田瑞都 Misato Fujita〉
孤独だったペソア。自分の名前すら忘れるような、冬の深い眠りを、かれももとめたでしょうか。

〈Copal Ildeaux〉
昼間は会社員、火曜の夜は画家に変身。
ダイヤモンドが似合う、カッコいいおばあちゃんに向けて年を重ねてゆきたい23歳。☞Instagram:@copal.ildeaux

〈八木ひろ子 Hiroko Yagi〉
季節の中では冬がいちばん好きです。